今回紹介させていただく本は、佐藤友哉・作「水没ピアノ」です。

 フリーターとして何の夢も持たず、メル友と交信することだけが楽しみの青年、家族全員が隔離された芸術家、少女を必死で守ろうとする少年。
 今作はこれら三人の主人公によって語られるミステリーです。最初はなんら繋がりを見いだせない話が、後半になって一気に繋がっていく様は圧巻です。

 この話、非常に切ないです。主人公たちは誰もが罪を抱えていて、何かを守りたがっています。しかし彼らは何一つとして守ることができない。異性も家族も。どんな感情があれど、理由、立場があっても、彼らは総じて空回りします。

 物語の途中、ほとんど完璧な才色兼備のキャラが登場します。そして劣等感丸出しの主人公と絡んでいくのです。彼によって主人公は己の負の部分、何もかもを引き戻されてしまいます。

 しかし抱えた罪がいくら重かろうが、主人公たちに共感する人は少なくないでしょう。それは彼らの考えが素朴だからです。その素朴からくる行動が過剰になっているのですが、それでも誰もが抱く、幼い考え方の延長線上にあるのです。
 そして全てが終わった時、彼らの願いが切なく響きます。

 複雑ではありますが、面白い要素の詰まった傑作です。是非一度手にお取り下さい。
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千早茜・作 「魚神」

コロと歩く

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